関東三十六不動霊場巡礼のウンチクとお参りのお作法など

東京散歩

「関東三十六不動霊場」。その響きは、他の札所巡りーー例えば谷中七福神めぐりとか東京十社めぐりに比べて、ストイックに思えるかもしません。

「不動霊場」という言葉に、不動明王の顔がコワいとか、「霊場」ってつくから何か見えちゃうんじゃないかとか、山伏とか、火を焚いて呪文を唱える儀式(護摩)とか、焚火の上をはだしで歩く火渡りとか、そんなあれやこれやを連想する人もいることでしょう。「不信心なのに不動霊場巡りとかして良いのだろうか?」と素朴な疑問を持っている人もいるかもしれません。

しかし、不動霊場という若干敷居が高そうなネーミングではありますが、気軽に回って無問題です。不動明王はあんな顔(失礼)してますが来る人を暖かく迎えてくれますよ。

というわけで今回は関東三十六不動巡りについてのご紹介です。主にウンチクになりますが、よろしくお付き合いください。

アカジン
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不動明王がなぜあんな顔(失礼)しているかの謎も解明

日本各地の不動明王霊場巡り

これまで当アカジンジャーナルでは、東京と中心にした札所巡りとして「昭和新撰江戸三十三観音」や「東京十社めぐり」、「秩父三十四か所札所巡り」、谷中・新宿・深川などの都内の七福神巡りなどをご紹介してきました。

これらの札所巡りと比べ、関東三十六不動霊場は、「関東」がつくだけあって、その札所は東京23区外・神奈川・千葉・埼玉のお寺も含まれるので、少し範囲が広くなります。

アカジン
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関東と言いながら、茨城・栃木・群馬の北関東三兄弟には札所が無いですけど…

ところで、日本には関東だけでなく各地に三十六不動霊場というものがもうけられています。そのラインナップは以下の通り。びっくりするのがその開創された年。

  • 関東三十六不動霊場 開創:昭和62年(1987)
  • 近畿三十六不動尊霊場 開創:昭和54年(1979)
  • 四国三十六不動霊場 開創:昭和63年(1988)
  • 北海道三十六不動尊霊場 開創:平成元年(1989)
  • 東北三十六不動尊霊場 開創:昭和62年(1987)
  • 九州三十六不動霊場 開創:昭和60年(1985)
  • 北関東三十六不動尊霊場 開創:昭和63年(1988)
  • 武相不動尊二十八所不動尊霊場 開創:昭和43年(1968)
  • 東海三十六不動尊霊場 開創:平成元年(1989)
  • 北陸三十六不動尊霊場 開創:昭和58年(1983)

どうやら、昭和末期から平成にかけて、不動霊場ブームが起きていたようですね。

制定しているのは密教(天台宗や真言宗)の元締めとか文化庁とかでなく、「不動霊場会」とかの関係者団体。宗教的・文化的な目的もあるでしょうが、観光というか参拝者を増やす目的もあったはずです。

というわけで物見遊山で関東三十六不動霊場巡りを行ってもバチはあたりませんから安心してください。

不動明王についての基礎知識

不動明王信仰は、日本「だけ」とても盛んだそうです。日本の不動明王信仰は空海が持ち込んだもので、密教(天台宗・真言宗)そして修験道(山伏的な宗派)で篤く信仰されています。厄除けの護摩供養の場面は目にした人も多いのではないでしょうか?あれも不動明王信仰の一つです。

不動明王と言えば特徴はそのビジュアル。目と歯をむいた怒りの表情、後ろにはメラメラと燃え盛る炎を背負って、手には剣と縄。

不動明王の立ち位置とビジュアルがこのようになったのは次の理由からです。

密教の教えの中に三輪身(さんりんじん)というものがあり、仏は相手によって三種類の姿で人を導くとされています。

学校の先生にも威厳タイプ・友達タイプ・スパルタタイプがいるようなものかもしれません。あるいは会社でも理論好き・ほめて伸びるタイプ(≒叱られると縮むタイプ)・M体質といった後輩や部下のタイプに合わせて指導方法を変える人もいることでしょう。仏様も人を導くためにあれやこれや工夫をしているのですね。

仏教や仏像に興味がある人はご存知の方も多いと思いますが、仏様というのはランクというかカテゴリというかそういったものがあります。如来・菩薩・明王・天部に分かれるのですが、三輪身は、ある仏様(如来)は相手によって別のカテゴリに属するキャラになるという考え方です。それぞれのキャラとカテゴリの関係は下記の通り。

①自性輪身(じしょうりんしん・仏そのままの姿=如来)
②正法輪身(しょうぼうりんしん・教えを説くための姿=菩薩)
③教令輪身(きょうりょうりんしん・並みのやり方では救えない人を怒りをもって導く=明王)

不動明王は大日如来の教令輪身です。大日如来は密教(天台宗や真言宗など)の本尊なので、関東三十六不動霊場の札所に指定されているお寺は密教系の宗派である天台宗や真言宗がほとんどです。(二番札所の大雄山最乗寺のみ曹洞宗)

不動明王は教令輪身キャラ、いわゆるスパルタ先生タイプなので、目をむき、歯をむき出して憤怒の表情をたたえ、火炎を背負い、煩悩を切り裂くための剣、救済のための縄(羂索)を持っているわけですね。

下の写真は九番札所である高幡山明王院金剛寺(高畑不動尊)の不動明王です。(お寺のパンフレットから拝借しました)。両脇に並ぶのは矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制托迦童子(せいたかどうじ)です。このお不動様は座像という座った姿ですが、どちらかというと立像(りゅうぞう)という立った姿が多くみられますね。

高幡不動のご本尊。脇侍に矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制托迦童子(せいたかどうじ)を従えた坐像。

高幡不動のご本尊。脇侍に矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制托迦童子(せいたかどうじ)を従えた坐像。この3体の形式が多くみられ、不動明王は坐像と立像がある

不動明王の仏像はこちらにも掲載しています。

なぜ36箇所巡礼なのか?

次は不動尊巡りはなぜ36か所なのかについて解き明かしてみましょう。

この理由は以下の通り。いわく

  • 人間の煩悩が36あること(煩悩の数は諸説あります)
  • 三十六童子(不動明王の眷属)にちなんだ

関東三十六不動霊場の場合は、札所に童子が設定されています。

童子というのは前章の写真で不動明王の両脇にいる子供のこと。不動明王の眷属です。

眷属というのは従者のこと。不動明王の眷属である三十六童子は「南無三十六童子」というお経に書かれています。ここに登場する三十六の童子がお経の順番と札所番号と合わせて制定されています。三十六不動巡礼のご朱印をいただくと、不動尊の御姿を描いたお札と一緒に童子の御姿御姿を描いたお札もいただけます。

アカジン
アカジン

除夜の鐘で有名な「108の煩悩」は、この36の煩悩に、前世・現世・来世の3つの時間軸を掛けた数らしいです。

関東三十六不動霊場めぐりお参りのお作法

関東三十六不動霊場会のサイトに勤行次第(お参りのお作法)が紹介されています。
それによると、お参りは次の手順で行うそうです。

①懺悔文(自分の過去の煩悩による悪行をを懺悔する)を唱える
②開経偈(かいきょうげ・お経に入る前のプロローグのようなもの)を唱える
③般若心経を唱える
④不動経を唱える
⑤不動明王の真言(不動咒・ふどうじゅ)を唱える
⑥願い事を唱える
⑥回向文(普回向(ふえこう)・今行った功徳が自分だけでなく普く広まりますようにという文、詳しくはこちら)を唱える

これは中々に敷居が高いと思わないでください。

これが正式な(不動霊場会が提唱する)一連のお参りのお作法ですが。これを参考にできるところからやっていけば良いのです。

不動明王にお参りする場合のキモは⑤の不動明王の真言です(もちろんお願いごともお忘れなく)。これは梵語の原文で不動明王を讃え、願いを叶えてくださいとお願いするもので、長さが大・中・小あり、たいていお堂の中にカタカナで書いてあります。それを読み上げるわけですね。

  • 短い:「ノウマク サンマンダ バザラダン カン」
  • 中間:「ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダヤ ソハタヤ ウンタラタ カンマン」
  • 長い:「ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン」

不動明王がご本尊のお寺でお祓いや祈願をしてもらうとき、火を焚いてお坊さんがそこにお札をくべてお経を唱える姿を見たことがあるかもしれませんが、お正月など多くの人が祈願するときはお経を唱え終わってすべての人の分のお札を火にくべ終わるまで、よく聞いているとこの真言のうち中間の長さのものが繰り返し唱えられています。

私がお参りをするときは、③、⑤、⑥を行っています。

③の般若心経は最後の部分「ぎゃーてぎゃーてーはーらーぎゃーて…」を唱えた後、真言の中間の長さを唱え、そのあとに願い事をしています。

不動霊場会の公式サイトには、お参りに持って行って使えるお作法をまとめたPDFファイルがのダウンロードできます。携帯や参照に便利な小冊子に仕立てることができて便利ですよ。

関東三十六不動のご朱印と御朱印帳

関東36不動巡礼専用の差し替え御朱印。左のページにいただいた御姿を貼っていきます。

関東36不動巡礼専用の差し替え御朱印。左のページにいただいた御姿を貼っていきます。

関東三十六不動霊場巡りには巡礼専用の御朱印帳があります

専用御朱印帳は「差し替え」というバインダー形式になっていて、各納経所にその場所のページが用意されているものです。

たいていは書置き(あらかじめ中身が書いてあって御朱印が捺してある)で用意されていて、参拝の日付を書いてくれます。そして御朱印と一緒に札所本尊と童子の御姿がいただけますが、この尊影を貼り付けるページも用意されています。

ご朱印を綴じるための専用バインダー(表紙)も札所に販売されてます。ただしこの表紙(台紙)は全ての札所に用意されているわけではなく、お寺の方のお話によると順番が若い(1番とか2番とか)の札所は置いてある確率が高いそうです

せっかくいただいた御朱印なので、それを保存する表紙は早めに手に入れておきたいですね。

アカジン
アカジン

ちなみに私は24番札所の飛不動尊で入手しました。

不動霊場会の公式サイトにも書いてありますが、御朱印というのは本来お寺にお経を納めたときの受領の証です。なので御朱印のことを納経印ともいいます。

関東三十六不動に限ったことではないのですが、せっかく札所巡りをするなら納経をすることをおススメします。

本来の御朱印の意味は、お寺にお経を収めた受け取りのしるしと言われています(諸説あり)。ですから札所巡りの際はお参りに加えてできれば納経をされた方が良いと思います。

納経とは自分で紙に経文を書いて、それをお寺に納めてもらうことです。書くお経は般若心経が一般的です。

私はアマゾンでなぞり書き用の用紙を買って筆ペンで書いています。御朱印をお願いする際に、「納経をお願いします」と言って、書いたお経を渡しましょいう。中には納経をお願いするとご本尊様の前に直接納めさせてくれるところもありますし、自分の書いたお経を両手に頂いて受け取ってもらえるだけでもなんとなくうれしいものです。

私の使っているなぞり書き用の写経用紙

札所ご本尊不動明王の御開帳

御開帳(不動明王像の公開)はお寺によって様々です。納経・ご朱印をお願いすると本堂に上げてくれてお不動様を間近で拝めたり、直接納経させてくれたりするところもあります。またお不動様の縁日は28日なので、この日に限って御開帳をしているところもあります。もちろんいつも開帳しているところもありますし、絶対秘仏の場合もあります。

各札所の御開帳状況は、できるだけ各札所のレポートでご紹介していきます。

関東三十六不動霊場札所一覧

一か所を除いてすべて密教(天台宗、真言宗)のお寺です。
御朱印、境内の写真など、札所の説明を含めた各札所のレポートへは、札所一覧の寺社名をクリックしてください

寺院名/札所本尊住所童子
1番霊場 大山不動尊
雨降山大山寺
神奈川県伊勢原市大山724矜羯羅童子
2番霊場 清瀧不動尊
大雄山最乗寺不動堂
神奈川県南足柄市大雄町1157制托迦童子
3番霊場 野毛山不動尊
成田山横浜別山延命院
神奈川県横浜市西区宮崎町30不動恵童子
4番霊場 和田不動尊
大聖山真福寺
神奈川県横浜市保土ヶ谷区和田2-8-3光網勝童子
5番霊場 日吉不動尊
清林山金蔵寺
神奈川県横浜市港北区日吉本町2-41-2無垢光童子
6番霊場 神木不動尊
神木山等覚院
神奈川県川崎市宮前区神木本町1-8-1計子爾童子
7番霊場 大聖不動明王
金剛山平間寺不動堂
神奈川県川崎市川崎区大師町4-48智慧幢童子
8番霊場 飯縄大権現
高尾山薬王院有喜寺
東京都八王子市高尾町2177質多羅童子
9番霊場 高幡不動尊
高幡不動尊金剛寺
東京都日野市高幡733召請光童子
10番霊場 田無不動尊
田無山総持寺
東京都西東京市本町3-8-12不思議童子
11番霊場 石神井不動尊
亀頂山三寶寺
東京都練馬区石神井台1-15-6?多羅童子
12番霊場 志村不動尊
宝勝山南蔵院
東京都板橋区蓮沼町48-8波羅波羅童子
13番霊場 目赤不動尊
大聖山東朝院南谷寺
東京都文京区本駒込1-20-20伊醯羅童子
14番霊場 目白不動尊
神霊山金乗院慈眼寺
東京都豊島区高田2-12-39師子光童子
15番霊場 中野不動尊
明王山宝仙寺
東京都中野区中央2-33-3師子慧童子
16番霊場 目青不動尊
竹園山最勝寺教学院不動堂
東京都世田谷区太子堂4-15-1阿婆羅底童子
17番霊場 等々力不動尊
瀧轟山満願寺別院
東京都世田谷区等々力1-22-47持堅婆童子
18番霊場 目黒不動尊
泰叡山瀧泉寺
東京都目黒区下目黒3-20-26利車毘童子
19番霊場 目黄不動尊
牛宝山最勝寺不動堂
東京都江戸川区平井1-25-32法挟護童子
20番霊場 深川不動尊
成田山深川不動堂
東京都江東区富岡1丁目17番13号因陀羅童子
21番霊場 薬研掘不動尊
薬研掘不動院
東京都中央区東日本橋2-6-8大光明童子
22番霊場 浅草寿不動尊
阿遮山寿不動院
東京都台東区寿2-5-2小光明童子
23番霊場 橋場不動尊
砂尾山橋場寺不動院
東京都台東区橋場2-14-19佛守護童子
24番霊場 飛不動尊
龍光山正寶院
東京都台東区竜泉3-11-11法守護童子
25番霊場 皿沼不動尊
皿沼山永昌院
東京都足立区皿沼1-4-2僧守護童子
26番霊場 西新井大師不動明王
五智山遍照院總持寺不動堂
東京都足立区西新井1-15-1金剛護童子
27番霊場 川越不動尊
成田山川越別院本行院
埼玉県川越市久保町9-2虚空護童子
28番霊場 川越大師不動尊
星野山喜多院慈恵堂
埼玉県川越市小仙波町1-20-1虚空蔵童子
29番霊場 苔不動尊
不動山洞昌院
埼玉県秩父郡長瀞町大字野上下郷2868宝蔵護童子
30番霊場 不動ヶ岡不動尊
王寿山総願寺
埼玉県加須市不動岡2-9-18吉祥妙童子
31番霊場 岩槻大師不動尊
光岩山釈迦院彌勒密寺
埼玉県岩槻市本町2-7-35戒光慧童子
32番霊場 岩瀬不動尊
普和山最上寺
千葉県富津市岩瀬416妙空蔵童子
33番霊場 高塚不動尊
妙高山大聖院
千葉県安房郡千倉町大川817普香王童子
34番霊場 夷隅不動尊
幸野山宝勝院
千葉県いすみ市苅谷307善爾師童子
35番霊場 波切不動尊
阿舎羅山大聖寺
千葉県いすみ市大原10676波利迦童子
36番霊場 成田不動尊
成田山新勝寺
千葉県成田市成田1-1烏婆計童子
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akajin

東京在住50代、ウォーキング、御朱印集め、写真撮影と現像、70年~80年代の少女漫画(りぼん・別マ派)、中国語学習などが趣味。
遠くない将来に愛媛に移住して下宿屋と海の家を営みながら四国八十八か所巡りをしようと画策中。

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