「東京十社」をご存知ですか?
読んで字のごとく、東京にある10の神社のことですが、これらの神社は「東京の結界」とか、「皇居(アレ風に言えば「宮城」)の結界」という説もささやかれています。この説は本当なのかどうか、東京十社巡りを終えてから改めて調べてみました。
そもそも、「東京十社」とは?
「東京十社」は昭和50年に定められました。
え?昭和50年???歴史とか浅くない?と思った方も多いでしょう。ただしこれは「イベントとしての東京十社があらためて制定された」という意味です。
時をさかのぼって明治時代、江戸が東京になり、江戸城が皇居になり、天皇が東京に移りました。そして天皇家が信仰する「神道(しんとう)」が重要視されるようになりました。今でも天皇家では、天皇家の祖先である天照大神(アマテラスオオミカミ)をまつる伊勢神宮に定期的にお参りしていますが、東京を日本の首都とした明治元年に、明治天皇が新しい首都の安寧を祈ってお使い(勅使)を遣わす神社を制定した(当時は12か所)のが東京十社の始まりです。
そして時代は昭和50年。昭和天皇即位50年を記念して「東京十社会」が、あらためて現在の10か所の神社を東京十社として制定し、専用御朱印帳や各神社のミニ絵馬などを作ってイベント的に取り扱い始めたのが現在の東京十社です。
ちなみに、当アカジンジャーナルの人気記事「昭和新撰江戸三十三観音」も、現在の三十三か所が制定されたのが昭和51年。現在の東京十社が制定されたのと同じくらいですね。そして昭和60年から平成にかけては日本各地で「〇〇三十六不動霊場」が続々制定されています。時代の節目には制定されがちなのでしょうか…
最初の東京十社の制定は明治元年ですが、制定された10の神社は、明治になって作られたのではなく、それぞれ長い歴史を持っています。各神社の場所も創建当時と変わらない神社もあれば、色々な事情で場所が変わっている神社もあります。とはいえ明治元年にはすでに現在と同じ場所に位置しています。
東京十社のラインアップは下記の通りです。
東京十社一覧表
社名 | 御祭神 | 御祭神ふりがな | 別名/その他 | 創建 |
---|---|---|---|---|
品川神社 | 天比理乃命 素盞嗚尊 宇賀之売命 | あめのひりのめのみこと すさのおのみこと うがのめのみこと | 東海道品川宿鎮守 東海七福神の大黒天 | 1187年 |
芝大神宮 | 天照大御神 豊受大神 | あまてらすおおみかみ とようけのおおかみ | 芝神明 関東のお伊勢さま | 1005年 |
赤坂氷川神社 | 素盞嗚尊 奇稲田姫命 大己貴命 | すさのおのみこと くしいなだひめのみこと おおなむぢのみこと | 江戸七氷川筆頭 | 951年 |
富岡八幡宮 | 応神天皇 他8柱 | おうじんてんのう | 深川の八幡さま 深川七福神の恵比寿社 | 1627年 |
日枝神社 | 大山咋神 | おほやまくひのかみ | 山王社,山王さん | 1478年 |
神田神社 | 大己貴神 少彦名命 平将門命 | おおなむちのみこと すくなひこなのみこと たいらのまさかどのみこと | 神田明神 江戸総鎮守 都心108町の総氏神 | 730年 |
亀戸天神社 | 菅原道真 天菩日命 | すがわらのみちざね あめほのひのみこと | 亀戸天神 東宰府天満宮 亀戸宰府天満宮 亀戸天満宮 亀戸神社 | 1646年 |
根津神社 | 須佐之男命 大山咋命 誉田別命 | すさのおのみこと おほやまくひのみこと ほんだわけのみこと | 根津権現 | 景行天皇の時代 |
白山神社 | 菊理姫命 伊弉諾命 伊弉冊命 | くくりひめのみこと いざなぎのみこと いざなみのみこと | 白山権現社 あじさい神社 | 948年 |
王子神社 | 伊邪那岐命 伊邪那美命 天照大御神 速玉之男命 事解之男命 | いざなぎのみこと いざなみのみこと あまてらすおおみかみ はやたまのおのみこと ことさかのおのみこと | 王子権現 | 1322年 |
東京十社を地図で見て、本当に結界なのかを確認してみる
各神社の参拝記録や御朱印、ミニ絵馬などについては、それぞれの神社探訪のページと、東京十社巡りを終えた総括ページでご覧いただくとして、いよいよ本ページの目的である、東京十社は本当に東京の結界となっているのかを検証していきましょう。
これは東京十社の専用御朱印帳に載っている、明治時代作と思われる(文章最後の日付から判断)案内図です。このページに書かれている文章については、東京十社巡拝を一回終えたので、いったん総括をしてみますにゆずりますが、本項ではこの各札所を結んだ「線」について見てみます。
真ん中の円、「禁裏」は皇居のことです。
上の図だと、これら10社は皇居(禁裏)をぐるりと囲んでいます。これがいわゆる「結界」と言われる根拠ですね。
「禁裏」の周辺に方向が書いてあります。それによれば、この図は西側が上になっていますので、北を上にしてgooglemapに重ねてみたのが下の図です。
薄い緑が御朱印帳の図に書かれていた図形、赤い線が実際の東京十社の場所を直線で結んだものです。
どうでしょう。
御朱印帳に書かれている図形より実際の地図の方がかなり縦長ではありますが、形はほぼ忠実ですね。線で言うと白山神社と日枝神社を結んだラインが皇居の西端ギリギリなのが気にかからなくもないですが、両方ともいびつながら皇居をぐるりと囲む形になっています。ですので、地理的には皇居の結界であるということは言えそうですね。
これが五芒星とか正十角形とか正円になっていたらスゴいと思ったんですが…
ともあれ、この赤いラインの内側に住んでいる人は、東京十社の結界によって守られているかもしれませんよ。
東京十社が作る東京の結界周回の総距離は約50km
次に「東京の結界」をなぞりながら東京十社巡りしたら、どのくらいの距離があるのかを計測してみあました。できるだけ各札所を直線になぞるように作っています。
その結果、実際の道路を通った下記のルートは約50km。徒歩で1日で回るのは難しいですが、自転車や電車・バスで回るのであれば1日でできそうですね。
周回をして出発点の神社に戻るべしというルールは無いので、6.6kmと一番距離のある白山神社と日枝神社の間をパスしたら総距離は43kmです。
地下鉄は主要道路の下を走っていて、バスもある程度大きな道を通っているので、地下鉄やバスを使えば結界をなぞって東京(江戸)を周回することもできそうです。
東京十社周回コースについては、もう一度実地検証をして詳しくレポートしたいと思っています。
東京十社以外にも「東京の結界」はある
東京(江戸)にはこのほかにお寺で結界を貼っていると言われる場所があります。
有名なものには陰陽五行に基づいた黒・白・赤・青・黄の五色の不動明王を安置している「江戸五色不動」があります。
江戸五色不動のリスト
寺名 | ふりがな | 住所 | |
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目赤不動 | 大聖山 東朝院 南谷寺 | とうちょういん なんこくじ | 東京都文京区本駒込1-20-20 |
目白不動 | 神霊山 金乗院 慈眼寺 | しんれいざん こんじょういん じげんじ | 東京都豊島区高田2-12-39 |
目青不動 | 竹園山 最勝寺 教学院 | さいしょうじ きょうがくいん | 東京都世田谷区太子堂4-15-1 |
目黒不動 | 泰叡山 瀧泉寺 | たいえいざん りゅうせんじ | 東京都目黒区下目黒3-20-26 |
目黄不動 | 牛宝山 最勝寺 | ぎゅうほうざん みょうおういん さいしょうじ | 東京都江戸川区平井1-25-32 |
東京の結界にこだわるなら、スピリチュアル系の人が提唱する「新東京五社」があります。新東京五社と江戸五色不動の合わせ技で東京は強固なパワースポットになっているとかいないとか…
このほか、東京の神社の中でも「格式の高い」と言われる5つの神社をグルーピングした「東京五社」も結構有名です。
これらについては、別のページでご紹介しましょう。
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