よしなが大奥のフィクションとノンフィクション=綱吉編③柳沢吉保=

漫画

よしなが大奥のフィクションとノンフィクション=綱吉編から、今回は柳沢吉保についての考察です。映画では尾野真千子さんが演じていましたね。

「柳沢吉保」の姓名セットはそもそも間違い?

柳沢吉保は綱吉の側用人にして寵臣。柳沢吉保の名で人々に記憶されていますが、この吉保の「吉」は綱吉から一字もらったもので、このとき「松平」の姓と美濃守の官位も同時に賜っています。これは元禄14年、松の廊下の刃傷沙汰があった頃で、綱吉治世の晩年です。ここで初めて「松平美濃守吉保」が誕生するわけで、それ以前は「柳沢出羽守保明」が正しいセットなようです。もっともこれは「よしなが大奥のフィクション」ではありませんが。

よしなが大奥の作中では、吉保のことを官位で呼ぶ人は出羽守→美濃守と、いつのまにか変わっていますが、綱吉は一貫して「吉保」(あるいは女名のおもと)と呼んでいます。(この「もと」の出所がちょっとわかりませんでした)

柳沢の年齢は、よしなが大奥オリジナル設定

そしてこの柳沢、史実では綱吉より一回り年下です。よしなが大奥の中でも「上様は戌年、柳沢吉保様も戌年」という隆光のセリフもあります。ただ、よしなが大奥では、柳沢が綱吉より一回り下だとつじつまが合わなくなってしまいます。

綱吉が結婚して間もないころ、父桂昌院と柳沢(そのころはおもと)の関係を目撃してしまいます。そのころの綱吉の髪型は「吹輪」というあんみつ姫スタイルで振袖を着ていますし、史実でも綱吉の結婚は19なので、ハイティーンだったと思われます。だとすれば柳沢は綱吉より一回り下とは到底考えられないわけで、さらに昔の二人の姿も、とても12歳の年齢差があるようには書かれていません

したがって、よしなが大奥では柳沢と綱吉は同い年と考えるのが妥当なところでしょう。

思い切って綱吉の年齢を史実の柳沢に合わせるという考え方もなくはないですが、そうすると母親(家光)の没後5年以上経っての生まれになってしまうので、やはり綱吉は史実と同じ年齢で柳沢同い年説を採ることにします。

余談ですが、綱吉の「月のものなど、、、」発言は、生類あわれみの令により大久保・四谷に犬小屋が作られたり、貨幣の改鋳(元禄小判)が行われた後で且つ、松の廊下刃傷沙汰が起きる前のことで、綱吉50代前半のことと思われます。
一説によると女性の閉経平均年齢は昔々からほとんど変わりがなく、世界の各地域によるバラつきもほとんどないそうです。

oooku_cut4

綱吉と柳沢の仲は史実でもトヤカク言われていた

よしなが大奥の独自設定「柳沢が綱吉を手にかけた、そしてそれは柳沢の綱吉への忠誠を越えた思慕からだった」、正直このあたりのいかにも21世紀のマンガっぽい心理状態が私は少々理解しかねるのですが、まあそれは置いておいて。

史実の綱吉と柳沢も男色関係にあったとの説があるそうです。そしてさらに柳沢の妻(側室の飯塚染子)は綱吉からのお下がり(拝領妻)だったとか、吉保の息子吉里は本当は綱吉の落胤で、だから綱吉は吉保と息子の吉里に自分の名の一部である「吉」の字と松平の姓を与えた、とかのエピソードがありますが、どうやらこれは史実ではないようです。

ただ、この雰囲気をよしなが大奥は前述した桂昌院と吉保の関係に写し取っているのではないでしょうか。史実の柳沢と綱吉、染子、吉里のとかくのウワサは柳沢の異例の出世ぶりから出たものと拝察しますが、よしなが大奥では、柳沢はとにかく綱吉一途だったことを強調するために使っています。

綱吉時代のよしなが大奥についての考察は、以下のページもご覧ください

よしなが大奥のフィクションとノンフィクション=綱吉編=
よしながふみ作「大奥」のフィクションとノンフィクションを考察するシリーズ、今回は綱吉編の考察です。 大奥 ~永遠~...続きを読む
よしなが大奥のフィクションとノンフィクション=綱吉編②牧野成貞事件=
よしなが大奥での牧野事件は、 『綱吉が最初の男である亜久里(牧野邦久)との関係を復活させ、挙句の果てにその息子貞安も大...続きを読む
よしなが大奥のフィクションとノンフィクション=綱吉編④綱吉の死=
よしなが大奥のフィクションとノンフィクション=綱吉編③柳沢吉保=でも少し触れましたが、柳沢吉保と綱吉についてはとかく世間...続きを読む

その他のよしながふみ作「大奥」についての考察

漫画
akajinをフォローしていただけると嬉しいです!
akajin

東京在住50代、ウォーキング、御朱印集め、写真撮影と現像、70年~80年代の少女漫画(りぼん・別マ派)、中国語学習などが趣味。
遠くない将来に愛媛に移住して下宿屋と海の家を営みながら四国八十八か所巡りをしようと画策中。

akajinをフォローしていただけると嬉しいです!
アカジンジャーナル

コメント