コロボックル物語の年表をつくってみた=最終回 星からおちた小さな人~コロボックル物語余話

書籍

佐藤さとるさんのコロボックル物語に関して、年表を作って現実世界とシンクロさせるこのシリーズも、いよいよ最終回となってしまいました。今回は第三巻「星からおちた小さな人」から、「小さな人のむかしの話」に掲載されている「コロボックル物語余話」まで一気に見ていきましょう。

第二巻と第三巻の間に5年の月日が流れている

「コロボックル物語の年表をつくってみた③ 豆つぶほとの小さないぬ」で、第二巻から第三巻までの時間経過は5年であることは書きました。物語の主軸である「マメイヌ発見」と「コロボックル通信発行開始」については、秋から春一番が吹くまで、約半年間のできごとでした。

コロボックル物語の年表をつくってみた③ 豆つぶほとの小さないぬ
「コロボックル物語の年表をつくってみた」シリーズの第三回目。今回は「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」の考察で...続きを読む

第三巻では、第二巻で3歳だったおチャメさんが小学校2年生、小学生だったエク坊は中学生のちょっとモノのわかったお兄さんに成長しています。

「星からおちた小さな人」は3日間のできごと

そして第三巻、「星からおちた小さな人」のエピソード、いわゆる「ミツバチ事件」は、発生から解決まで何とわずか3日間です。前作「豆ぶつほどの小さないぬ」以降は、エク坊、おチャメさんなどコロボックル物語の第二世代の年齢が書かれていますから、時間経過は追いやすくなっていますね。

「ふしぎな目をした男の子」は8年間が描かれている

続く第四巻「ふしぎな目をした男の子」は、第三巻の「ミツバチ事件」が起こった直後、「おきて」が変わった時から物語が始まります。その物語の中でふしぎな目をしたタケル君は2歳から小学校3年生まで成長し、「桜谷用水池事件」で終了します。「ミツバチ事件」直後から「桜谷用水池事件」まで、その時間経過は8年です。

ふしぎな目をした男の子は、その舞台のほとんどが、コロボックル小国の外になっていることも一つの特徴です。

そして第五巻「小さな国のつづきの話」は「桜谷用水池事件」から11年後が舞台です。おチャメさん、おチャ公の年齢が明記されているので、年表づくりとしてはむずかしいことはありません。

小さな国の続きの話は伏線回収要素もあり

第四巻「ふしぎな目をした男の子」と第五巻「小さな国のつづきの話」の間には11年の月日が流れていますが、この五巻は単なる続編ではなく、前巻と並行している部分や伏線回収、補足の要素も含まれています。

例えば、第四巻のまえがきのこの文章、「あれ?」と思った方も少なくないのではないでしょうか?

もう一つの大きいほうは、いまのところだれも住んでいない。じつは、コロボックルのひみつをよく知っている人間の一家があるのだが、その一家が、ときどきこの山にあそびにきたときつかうだけだ。=ふしぎな目をした男の子~はじめに

実はこの答えが10年以上も経て書かれた第五巻「小さな国のつづきの話」に書かれているのです。

また、「小さな国のつづきの話」で、おチャ公がおチャメさんにコロボックル物語の本を渡された時の文章

イサオがコロボックルの本を読んだのは、大学にはいるすぐ前だった。(略)そのころはまだ三さつしか出ていなかったが。=小さな国のつづきの話~第三章みんなのトモダチ

このことからも、第三話以降は物語のテーマは時系列を追っていながらも並行して進行していることがわかります。

そこで、コロボックル物語完結後に発行された別巻「小さな人のむかしの話」に収録されている「コロボックル物語余話」中の登場人物をフォローしている文章もふくめて、人間側の登場人物の年表を作ってみました。

コロボックル物語年表③ 第三巻以降の人間側の年表

nenpyo10

さて、今度はコロボックル側の年表です。
これが最後の年表になるので、コロボックル小国建国からの歴史と、物語が刊行(発表)された年も付け加えておきました。「コロボックル童話集」に収録されている短編も、講談社青い鳥文庫に記載されている発表時期に従って付け加えておきました。

コロボックル物語年表④ 建国いらいのコロボックル小国の年表

nenpyo11

有川浩がバトンをつなぐコロボックル物語

完結編である第五話「小さな国のつづきの話」で、人間側の次の世代がらせん状につながっていく予感をにおわせています。そこからさらに現在まで四半世紀以上を過ぎています。小学生の時にコロボックル物語を読んだ(そしてその時は四巻までしかなかった)私は、自分の子供が小学生の時に、この本を与えました。その子供もすでに成人しています。登場人物も、読者も世代をつないでいます。

そして昨年ついに人気作家の有川浩さんが新しいコロボックル物語を刊行しました。下記の「コロボックル絵物語」は、今までのおさらいも含めた掌編でしたが、きっと新しいコロボックル物語が続いていくことを信じ、願っています。

2015年10月追記:ついに新しいコロボックル物語が始まる

佐藤さとる氏からコロボックル物語のバトンを受け取った人気作家の有川浩さんによる、新しいコロボックル物語が始まりました。

レビューはこちら

かわいた畑に撒いた水からたくさんの芽が出て「だれもが知ってる小さな国」ができあがった
当アカジンジャーナルのサイトアクセスの統計を見ていると、最近コロボックル物語のページへのアクセスが多いことに気づきました...続きを読む

コロボックル物語の年表をつくってみたシリーズはこちら、合わせてお読みください

だれも知らない小さな国は崇高なラブストーリーであると主張したい
身の丈一寸ほどの人間「コロボックル」が主役の「コロボックル物語」シリーズの第一巻である本書は、奇跡の小人「コロボックル」...続きを読む
コロボックル物語の年表をつくってみた① だれも知らない小さな国=前篇=
ものがたりに正確な年表を求めるのは、おそらく野暮なことなのでしょう。ただ、私は「小さな人のむかしの話」に収録されている「...続きを読む
コロボックル物語の年表をつくってみた② だれも知らない小さな国=後篇=
コロボックル物語1 だれも知らない小さな国年表後半 コロボックルの味方になってからコロボックル小国の誕生まで ...続きを読む
コロボックル物語の年表をつくってみた③ 豆つぶほとの小さないぬ
「コロボックル物語の年表をつくってみた」シリーズの第三回目。今回は「コロボックル物語2 豆つぶほどの小さないぬ」の考察で...続きを読む
書籍
akajinをフォローしていただけると嬉しいです!
akajin

東京在住50代、ウォーキング、御朱印集め、写真撮影と現像、70年~80年代の少女漫画(りぼん・別マ派)、中国語学習などが趣味。
遠くない将来に愛媛に移住して下宿屋と海の家を営みながら四国八十八か所巡りをしようと画策中。

akajinをフォローしていただけると嬉しいです!
アカジンジャーナル

コメント