大和和紀のマンガと言えば何を思い浮かべますか?「はいからさんが通る」?「あさきゆめみし」?「アラミス78」?
ちなみに私が一番好きなのは「N.Y.小町」です。近代日本を扱った大和和紀の長編の中でも主人公が一風変わっててギャグやご都合主義盛りだくさんなところが良いですね。主人公は美人なのに目つきが悪いというのも面白い。

今年2016年、大和和紀センセ(昭和の少女漫画誌風)は画業50年を迎えるそうです。笑点と同じですね。いやはや素晴らしい!その大和和紀の最新作が、現在も連載中の「イシュタルの娘」です。

この物語の主役は安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した才女「小野お通(於通)」。
「天眼」という未来や人の運命を見ることができる目の持ち主の於通が、戦国時代を自分の美的センスと才能で生き抜いていくという物語です。
「文人」という立場で於通は様々な人と関わっていきます。武士、公家、天皇家、武士の妻たち、絵師、 芸人、霊能者、忍び・・・。その中に真田信幸・信繁兄弟との強い関わりが描かれ、於通と於通の生涯のパートナーになる近衛信伊(信輔)を除けば一番多く描かれているのが真田兄弟です。
小野お通については史実として明らかにされていない所も多々あるようですが、どうやら真田家と於通の繋がりが強いのは確かなようです。物語では於通と真田兄弟は、きょうだいの契を交わすのですが、史実でも次の世代に真田家と於通の子孫は縁を結ぶことになったのです。

第一巻、名高い修験場であり忍びの里である飯綱の里で、お通と真田兄弟は出会います。兄の源三郎(信幸)は穏やかな月のよう、弟の源次郎(信繁・幸村)は輝く星のよう、とお通は評しています。

第二巻では天正三年の上田合戦で信幸の合戦デビューが描かれます。父の昌幸も登場します。真田昌幸も豪放磊落な人物として描かれます。

第三巻では、上田合戦の後、秀吉の元に人質に出されている信繁(幸村)が大阪城でお通と再会し、信繁(幸村) はお通が落ち込んでいるのを見てピクニックに誘います。その行き先は茶臼山で、茶臼山から大阪城を眺めながら信繁(幸村) は は大阪城を攻める脳内シュミレーションしています。
「もしわしが大阪城を攻めるとして、、、陣を構えるとすれば、この茶臼山だろうから」
真田丸を予感させる台詞ですね。

その後の北条家との戦いにおいて、信繁(幸村)の初陣となる松井田城陥落のシーン、石田三成に従った忍城攻め、そこで信繁(幸村)が将来の岳父となる大谷吉継と出会うシーンもページをさいて描かれています

フィクションの部分でも(というかお通との具体的な関わりについてはほぼフィクション)、思う人と結ばれないお通のために一肌脱ぐ真田兄弟、兄弟の契りを交わしたものの、実は・・・の部分など、真田兄弟の優しさや男気、武士としての矜持、兄弟・一族のの絆など、ともすれば主役を食ってしまうくらい細かく描かれています。

そして10巻では、主役そっちのけで半分くらいのページをさいて、関ヶ原の戦いにおける真田親子、そして戦いが終わった後の昌幸・信繁(幸村)助命のために奔走する信幸(これ以降信之)が描かれています。
兄弟の父、真田昌幸もこの巻では、さらに良い味を出していますし、真田兄弟のそれぞれの岳父、大谷吉継と本多忠勝も戦国の時代を戦い抜いてきた武士として、魅力的に描かれています。

実は真田兄弟は作者のお気に入りの武将だそうで、9巻の巻末には作者による真田幸村に対するアツい思いがつづられています。

現在「イシュタルの娘」はコミックスは12巻まで発売されています。この12巻では、お通が九度山に蟄居している信繁(幸村)を農婦に変装して訪ねる場面があります。危険を冒して訪ねてきたお通に対して信繁(幸村)は今の自分の武士としての心持をうちあけます。真田丸を築いて鬼神のような活躍をした大阪冬の陣を予感させる発言です。
きっと13巻は大阪冬の陣が描かれることでしょう。その際、作者お気に入りの真田幸村がどのように描かれるか、今から大変楽しみです。多分2016年夏ごろの発売となるのでしょうか?

大河ドラマ「真田丸」では、信幸役が大泉洋さん、信繁役が堺雅人さんです。お二人のキャラクターは「イシュタルの娘」の真田ブラザーズのキャラクターと逆の印象を受けますが、そんな違いを見比べてみるのも面白いかもしれませんね。

「イシュタルの娘」については、近衛信輔(信尹)の歌舞伎っぷりとか、それこそ主人公の小野お通についてだとか、書きたいことは色々あるので、それはまたあらためて。